パソコンの処分や譲渡をする際には、データの完全な消去が必要です。
ただゴミ箱にファイルをドラッグ&ドロップしただけでは、データは完全に削除されません。ハードディスクの中に残っているデータは専門的な技術を使えば復旧できてしまう可能性があります。
また、ネットの記事や解説動画を見ながら、見様見真似でパソコンを分解したり、物理的に壊そうとして、思わぬトラブルや怪我に繋がってしまう可能性もあります。
この記事では、パソコンから個人情報や重要なデータを完全に消去し、不要なトラブルを避ける方法をご紹介します。
データ消去が必要な場面は?
パソコンのデータを完全に消去する必要がある場面は次のようなケースです。
データ消去が必要な場面①:パソコンの廃棄
パソコンは、自治体の不燃ごみや粗大ごみに出すことができないので、次のような方法で廃棄することができます。
・パソコンメーカーに回収を依頼する。
・家電量販店などのパソコン取り扱い店舗に回収を依頼する。
・自治体の回収ボックスや 無料回収サービスに依頼する。
データ消去が必要な場面②:パソコンの売却
廃棄以外の方法として、リユースショップへの持ち込みや、ネットオークションやフリマアプリで販売する方法があります。
データ消去が必要な場面③:パソコンの譲渡
家族や友人、知人の方に譲渡されることもあると思います。
そういった、顔見知りの方にパソコンを譲る場合も、データが残ったままだと、意図せずプライバシーが侵害されるリスクやトラブルに発展する恐れがあるため、データの完全な消去が必要です。
パソコンやデジタルデバイスに保存されたデータは、個人情報、金融情報、仕事の文書、プライベートな写真や動画など、多岐にわたります。これらのデータが他人の手に渡ることは、プライバシーの侵害、金銭的損失、さらには詐欺やアイデアの盗用など様々なリスクに繋がる可能性があります。
個人情報の漏洩リスクと対策
個人情報漏洩のリスク
パソコンやデジタルデバイスに保存されている個人情報の漏洩は、個人のプライバシー侵害はもちろんのこと、金銭的損害や信用の失墜にも直結します。
クレジットカード情報やログイン情報が第三者によって悪用されると、不正利用による被害に遭う可能性が高まります。また、プライベートな写真や動画が無断で公開されると、精神的な苦痛や社会的な信用失墜を招くこともあります。
- 金融情報
クレジットカード番号、銀行口座情報、オンラインバンキングのログイン情報など。 - 個人識別情報
氏名、住所、電話番号、メールアドレス、社会保障番号(またはマイナンバー)、パスポート番号など。 - ログイン情報
SNS、メール、オンラインストア、各種サブスクリプションサービスのIDとパスワード。 - プライベートな写真や動画
個人的な思い出写真や動画、仕事の資料、日記やメモなど。 - 企業情報
財務情報、人事情報、従業員等の個人情報、顧客情報、技術的な情報など。
多くの人が自分のパソコンに重要な情報は入っていないと思い込んでいますが、実際にはクレジットカード情報や会員情報など個人情報が含まれていることが多いです。
また企業のパソコンでは、顧客情報の漏洩はユーザーへの被害だけでなく、会社の損失や経営への悪影響、情報漏えいを起こした個人への法的な罰則も伴う可能性があります。
このように、壊れて動かないパソコンであっても、ハードディスクが無事な場合は情報が抜き取られるリスクがあります。
パソコンを廃棄する際にはデータの完全な消去を確実に行うことが重要です。
対策方法
パソコンを処分、譲渡、または売却する前に、専門のソフトウェアを使用してデータを完全に消去するか、物理的に破壊することが必要です。
データ消去を安全で且つ確実に行うために、信頼できる専門業者に依頼するのも一つの方法です。
データ消去方法
パソコンをフォーマットや初期化すると工場出荷状態に戻るように見えますが、この方法だけではデータが完全に消去されているわけではありません。詳しい知識を持つ人は、これらのデータを復元することが可能です。
初期化はハードウェアやソフトウェアを最初の状態に戻すことであり、リカバリーは破損したデータやハードウェアを復旧する行為です。データを完全に消去するにはより徹底した措置が必要です。
1. ソフトウェアによるデータ消去
データ消去の簡単な方法として、データ消去ソフトを使用し、ハードディスク内のデータを無意味なデータで上書きして読み取り不可能にする方法があります。
データ消去ソフトは家電量販店で約5,000円で購入できるほか、パソコン購入時の初期化ディスクに含まれていることもあるので、確認が必要です。また、無料のダウンロード可能なフリーソフトもあります。
この方法はパソコンを分解せずに済むメリットがありますが、起動しないパソコンには使用できないデメリットがあります。適切な使用には確認と専門家への相談が推奨されます。
2. 物理的に破壊する
パソコンの中にあるデータを保存しているハードディスクやSSDを物理的に破壊することは、データを完全に無効化する一つの方法です。この方法では、ハードディスクを取り外し、穴を開けるなどしてデータが読み取れなくなります。パソコンから情報が完全に削除されるため、安心です。
この手法のメリットは、追加の費用がかからない点です。しかし、デメリットとしては、ハードディスクの取り外しが難しいことや、分解後の廃棄が困難になる場合があります。廃棄は地方自治体の規定に従って行ってください。
データ消去手順:
- パソコンの電源を切り、バッテリーを抜きます。
- 必要なネジを外してハードディスクを取り出します。
- ハードディスクに穴を開ける、ハンマーで叩いて破壊するなどして物理的に破壊します。
- パソコンの他の部分を元に戻します。
物理的破壊の際は、ハンマーで叩くと破片が飛散する恐れがあるため、安全を考慮してください。破片は鋭利で怪我のリスクがあるため、状況に応じて安全な方法を選んで実施しましょう。
3. 磁器装置を使ったデータ消去
磁気消去法はデータを完全に無効化する確率が高いため、推奨されるデータ消去方法の一つです。この方法では、ハードディスク内部に記録された磁気信号に特殊な磁気装置を用いて強力な磁力を当て、データの読取りを不可能にします。
この手法は特殊な装置が必要であり、一般的な家庭や会社では実施が困難です。専門の企業に依頼する必要がありますが、パソコンが壊れて動かなくなった場合でも、ハードディスクを取り出してデータ消去を行うことができるため、広範なシナリオでの使用が可能です。
メリット
- 起動しないハードディスクでもデータ消去が可能。
デメリット
- 専用の磁気装置が必要であり、一般的な家庭や会社では使用が難しい。
磁気消去法を検討している場合は、データ消去サービスを提供する専門企業に相談することをお勧めします。
4.パソコンメーカーへ依頼する
リサイクルマークが付いているパソコンは、製造メーカーによって無料で引き取られることが多いので、リサイクルマークの有無を確認しましょう。2003年10月以降に販売されたパソコンには通常、このマークが付けられています。リサイクルマークがない場合でも、メーカーは小額の料金でパソコンを回収してくれる場合があります。使用済みのパソコンの回収と再利用は、メーカーに法的に義務付けられています。
ただし、メーカーによる回収プログラムでは、データが悪用されるリスクはありませんが、データ漏洩が発生した場合の責任は負いません。そのため、回収依頼を行う前に、別途データ消去を行うことが推奨されます。
メリット
- リサイクルマークがあれば無料で回収される。
デメリット
- メーカーはデータ漏洩に対して責任を負いません。安全のために別途データ消去が必要になることがあります。
この情報を基に、安全かつ環境に優しい方法でパソコンを処分する選択肢を検討しましょう。
5.メーカー以外の専門業者に依頼する
パソコン専門店やサポート会社にデータ消去を依頼すると、専門家が適切な方法でデータを処理してくれます。しかし、個人情報を含むデータを扱うため、信頼できる業者を選ぶことが非常に重要です。信頼できる業者の選定基準には、以下のポイントを含めると良いでしょう:
- 会社のホームページに住所、電話番号、会社名が明記されているか。
- データ消去証明書の発行サービスがあるか。
- プライバシーマークや情報セキュリティ管理システム(ISMS)などの個人情報保護資格を保有しているか。
データ消去証明書は特に重要で、データ漏洩が発生した場合に法的保護を受けるための証明となります。したがって、この証明書を発行できる業者を選ぶことが推奨されます。
メリット
- 専門家が回収とデータ消去を行うため、技術的に信頼できる。
- プロに依頼することで、データ消去が適切に行われる。
デメリット
- 業者を選ぶ際の信頼性の見極めが必要。
- ほとんどが有料であり、費用がかかる。
適切なデータ消去業者を選ぶことで、パーソナルデータの安全とプライバシーの保護が確保されます。
データ消去を業者に依頼する際の注意点
データ消去証明書の有無
パソコンがもう不要である場合、パソコンのリサイクルを考えることが大切です。ただし、メーカーや専門業者に依頼するとリサイクル料が発生することがあります。
無料でパソコンを回収して、データ消去まで行ってくれるサービスも存在しますので、パソコンを処分する際にはそうしたサービスの利用を検討してみましょう。
また、データの安全に不安を感じる場合は、「データ消去証明書」を発行してくれる業者を選ぶことで、より安心してパソコンを手放すことができます。
セキュリティの対策ができている業者か
パソコンのデータを消去する際は、セキュリティがしっかりしているかどうかを確認することが重要です。個人情報を扱う会社として、情報漏えいを防ぐためにどのような対策が取られているのかをチェックしましょう。
データ消去を行う環境の調査や、プライバシーマークや情報セキュリティ管理システム(ISMS)などの認証を持つ事業者を選ぶことは、個人情報保護の面で信頼できる目安となります。
セキュリティが高いソフトウェアや機器を使用する場合は、政府機関や公的機関に認定されたものを選ぶのがおすすめです。また、公開情報がない場合は、直接業者に問い合わせて詳細を聞くと良いでしょう。
データ消去方法の説明が十分か
データを消去する際には、使用している方法(物理破壊やソフトウェア消去)や装置・専用ソフトを事前に確認しましょう。無料のソフトウェアを使用している場合、その消去行為に信頼性が欠けることがあります。
一方で、ソフトウェア消去後に物理的破壊を行うなど、複数の手法を組み合わせた徹底したデータ消去を提供している業者も存在します。適切な消去方法を明確に説明してくれる業者を選ぶことが重要です。
データ消去費用
データ消去の費用は通常無料から数千円程度ですが、証明書の発行や追加の作業によって高額になることもあります。サービスが「無料」と表示されていても、実際には別途料金が発生する場合があるため、料金を明確に表示している業者を選びましょう。事前に料金を確認し、明確な見積もりを提供してもらうことが大切です。
専門業者を利用する場合の費用はおよそ2,000円から10,000円が一般的です。専門業者は最新の機器を使用してデータを完全に消去し、消去の証明書も発行してくれるため、データの安全性と確実性が保証されます。
パソコンデータ消去時の注意点とバックアップの重要性
パソコンのデータを消去する際には、トラブルを避けるためにいくつかの注意点があります。データ消去を行う前に、大切なデータは必ずバックアップを取っておくことが重要です。これには写真や動画など、後で必要になるかもしれないファイルが含まれます。今回ご紹介してきたデータ消去方法を実行してしまうと、復元はほとんど不可能になります。
バックアップは外付けハードディスク、CD、USBなどの物理メディアや、最近ではクラウドサービスを利用することも一般的です。
もしパソコンが起動しない場合でも、故障の具合によってはデータ救出が可能なので、専門業者に相談することをお勧めします。救出したデータを別のメディアに保存した後、不要なデータのみを安全に消去することができます。これにより、新しいパソコンにデータを引き継ぐことも可能になります。
大切なデータはバックアップをとる
パソコンを廃棄する際は、不要なデータを消去することに集中しがちですが、写真や動画など、大切に保存したいデータが存在することを忘れないでください。一度消去したデータは復元が困難ですので、事前に重要なファイルは確実にバックアップしておきましょう。
バックアップは外付けハードディスク、CD、USBドライブなどの物理メディア、またはクラウドサービスを利用して行うことができます。万が一、パソコンが起動しなくなった場合でも、専門業者に相談すればデータの救出が可能な場合があります。救出したデータを別のメディアに保存した後、不要なデータを消去することで、新しいパソコンへのデータ移行もスムーズに行えます。
データ消去証明書の重要性と利用のすすめ
データのプライバシー保護に関心がある方は、データ消去時に「データ消去証明書」の発行を依頼することが重要です。この証明書は、データが完全に消去されたことを証明するもので、もしデータが残っていることによるトラブルが発生した場合、法的な保護を受けるための重要な証拠となります。
データ消去証明書の発行が有料の場合、その費用は事前に確認しておくと良いでしょう。特に学校、団体、企業など、大量の情報を扱う場合には、この証明書を受け取ることで安心感が得られます。